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【空想世界旅日記】床抜県2日目その④~はし休のピリ辛ちょちょづく~

営業時間間もなくにして早速お店に入ります。

「いらっしゃいませ」

頭を垂れて覗き込むように迎え入れてくれた主人はどこか人当たりも良さそうで、第一印象としては良い感じです。
既に常連と見られるお客さんがカウンターの一席に座っていましたが、私も折角なので主人の顔が見える位置に座ります。

お店自体はあまり広くなく、カウンターに4人と4人がけのテーブルが4席といったところでしょうか。
観光地の通りに構えることから新規のお客が入るのは珍しくないようで、不審にキョロキョロと見回す私を前に主人はニコニコと持て余す感じで私の注文を待っています。

手書きのメニューボードには日替わりのメニューがいくつも並べられています。個人でやっている居酒屋だけあって創作料理が豊富です。
しかし、今回の目的はあくまでちょちょづく。メニューボードの中にちょちょづけを見つけるやいなや、瓶ビールと合わせて注文をしました。
とりあえず他に並ぶ魅力的なメニューについては後回しです。

「あの、ちょちょづくはお通しにもなっていますが、どうしますか?」

何と驚きです。
方針が決まった凡庸なチェーン店とは違って突き出しにちょちょづくを起用するこの気の利き様。
しかも味付けは普通なものと唐辛子を使用した辛めのものと選べるとのこと。ピリ辛が好きな私としては辛めを頼みたいところですが、これもまた後にしてとりあえずは普通のちょちょづくを頼みました。

私はこのちょちょづくを食べるために初めてこの土地にやってきただとか、どんな味がするのか楽しみといった率直な思いを言葉にして、感じの良い主人とそれとなく言葉を交わします。
思えばこの一日、このちょちょづくにありつけるまで非常に長かったように感じます。一日とは言え、おあずけが続くと気も滅入るものです。

「お待たせしました」

瓶ビールと一緒に出されたその小鉢は思った通りのビジュアルと言いますか、一応のことネットで予め見た目を見てはいましたが、家によってその味付けも見た目も異なるとのことで、この店はどういった感じかと期待していましたが、良くも悪くも予想通りでした。
強いて挙げるのであれば、小ねぎが乗っているというところでしょうか。

しかしビジュアルからどうこう言って口に運ばないのも野暮です。
やっと今回のメインテーマにありつけるのだからとさっさと口に運びます。

お、これは思ったよりも硬い。干してある分味がよく染み込んでいて、硬い分噛むほどに染み出します。オオノガエテ本来の渋みも残っていて、いかにも郷土料理といった感じでしょうか。若干好みが分かれそうな感じもします。
しかしこれは酒を片手につまむとなると話は別でしょう。
豆腐は餡と絡んで濃い味付けが口当たりに楽しいですし、後に残るオオノガエテが酒の良い手引きになります。

最初はてっきりメンマのような感じを想像していたのですが、これはサクサク食べるというよりも、じっくり食べるに適した感じ。
酒のあてにはもってこいですね。
ビールの後は地酒。辛味の強いちょちょづくも追加してじっくりと嗜みます。

それにしても思っていた以上の収穫でした。
他にもいくつか創作料理をどれも美味しくいただきましたが、それにしてもちょちょづくは初めての体験でした。
主人に近場でオススメ観光地の聞き取りもできましたし、上相重市の観光は大満足ですね。

そういえばちょちょづくって何でちょちょづくって呼ばれているんでしょうか。お店で聞いておくべきでした。

この日記はフィクションです。実際の地名、人物、団体とは一切関係ありません。
  1. 2020/11/02(月) 00:24:47|
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【空想世界旅日記】床抜県2日目その③~幻のちょちょづくアレンジを求める~

上相重市の代表料理ときたらやっぱり"ちょちょづく"。
天日干しにしたオオノガエテを豆腐とごま油で和え、鶏そぼろの餡を乗せた上相重市民の家庭料理です。

B級グルメと謳って外部にファッションな地方料理を売り出すことが多くなった昨今、ちょちょづくは昔ながらの郷土料理でありながら、家庭で出されることが殆どということもあって、あまり飲食店では見かけません。
悲しいかな私はその裏グルメを見つけられずに途方に暮れていました。

確かに土産物屋などではお手軽な既製品が売ってありますし、またどこかの旅路で食べようと思って一つばかし購入もしました。
しかしながら、今求めているものはこれではないのです。
私が食べたいのそれぞれの家が出す味。量産型のものではありません。
天日干しにしたオオノガエテに餡をかけるという型はありますが、アレンジの仕方は家庭によって様々。
話によれば鶏そぼろ餡の代わりに肉味噌をかけたり、麻の実を混ぜたり、わさびおろしなど汎用性は多種に及びます。
それ故に私は色々なアレンジを見てみたい。口にしてみたいのです。

ですが、色々な飲食店を探すもどこにもない。
あるとすれば恐らく個人経営の居酒屋か民宿あたりでしょう。
宿探しのついでにちょちょづくが出てきそうな民宿を探すのもありかと思いましたが、如何せん技匠通りの近辺に宿が見当たらなかったので、仕方なく私は昼飯をラーメンで済ませ、居酒屋が開くまで暫し憩いの一時を過ごすことにしました。

それにしても今回昼飯にいただいたラーメン、これもまたなかなか美味しいものでした。
技匠通り下4丁目の角にあるラーメン屋"たずつみ"。醤油ベースの薄味に細身のストレート麺。パリッとした焼海苔が4枚入ってチャーシューは小さめですが、その分よく絞めてあるのか非常に凝縮感があります。そして何より上に乗っけられたワラビが嬉しい。
私はあっさり系のラーメンが好みなので、見知らぬ土地で親しみの持てる味にありつけたのが身に沁みました。
観光地の通りに面しているというのに、あまり出張らず、味も素朴で食べやすい。お昼を過ぎた時間帯でも混んでいたという理由も頷けました。

上相重市のゆるきゃら"ガエテもん"との写真も撮れましたし、何だかんだ技匠通りを満喫しました。
残るは居酒屋で食べる人生初のちょちょづく。あわよくばその後に宿も探して二度目のちょちょづく。
前もって調べておいた居酒屋"はし休"ののれんをくぐって、いざちょちょづく。

この日記はフィクションです。実際の地名、人物、団体とは一切関係ありません。
  1. 2020/10/29(木) 01:18:57|
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【空想世界旅日記】床抜県2日目その②~歴史が育んだ技匠通り~

あてもなく旅をする人間にとって、観光地が近くにあるというのはありがたいもので――。

上相重は元々隣町の手端洞町の一部だったのですが、そもそもその手端洞は林業が盛んで、手端洞の工芸品を作る職人達が集まって住んでいた場所が今の上相重になったと言われています。
手端洞も全国のスギモドキ生産の約12%を占めるといった林業で有名な町ですが、木材の代用品として"DPP-5A"が主流となった今ではスギモドキもレトロインテリアなどといった嗜好目的でしか使用されなくなってしまいました。
嘗ての人工飽和時代に上相重は独立した歴史がありますが、今でこそ確執はなくなりましたが、当時は手端洞の職人居住区が対象に含まれていたことで相当揉めたのは言うまでもありません。
そしてその職人居住区を中心に上相重駅が建てられ、じきに栄えていったわけですが、この上相重駅の面白いところは職人居住区を中心として建てられたために、手端洞との町境に隣接しているというところです。
手端洞町は林業が盛んであるというというだけあって、山々に囲まれている分土地も広いので、列車に乗っている分にはあまり駅との距離に違和感はありませんが、上相重市の中心街が端っこにあるというのは全国的にも珍しいものであると思えます。

話は戻りますが、駅近くの中心街がこの上相重市の主な観光スポットとなります。
時代に沿って形こそ変わる部分はありますが、中央通りを脇に入った匠の家系が並ぶ技匠通りは当時の面影を残しています。
実際に人が住んでいる民家もあれば、オオノガエテ加工品を販売する店、資料館となって史実を展示しているところなどなど……居住区が元であっただけあって広く枝分かれしているため、満遍なく歩いて回ろうと思うと結構な時間を要します。
勿論、あてもなく歩き回る身としてはこういった方が十分にありがたいわけですが。

それにしても平日のまだ朝早い時間帯だというのに人通りはなかなかのもの。オオノガエテを使用した商品が人気を博しているというのが拍車をかけているのか、観光地のあり方を見せつけられた気がします。先日の御手定山とは大違いです。

折角なので私も一つオオノガエテのキーホルダーを購入しました。様々な色のものがありましたが、今回は一番オーソドックスな薄緑のもの購入。光に透かすと乱反射するその特性は見ていて飽きないです。
旅の証としてカバンに取り付けますが、この調子で全国行脚していったら、ゴールをする頃にはどうなっているのでしょうか。

キーホルダーの他にも抽出した原料をそのまま固めたもの、それを削って作った置物や、リングやネックレスといったアクセサリーの類は勿論のこと、食材としても使用されているだけあって、料理にまぶすものとしても売られていました。
見た目とは裏腹に、オオノガエテというものは意外と汎用性があるのを実感しましたね。
道中、粉末を一緒に練ったオオノガエテソフトも食べましたが、色合いが綺麗なだけあって見栄えする反面、特に味は感じられませんでした。ただのソフトクリームでした。

上相重の要をある程度歩き回ったところで、次は今回のメインテーマである"ちょちょづく"です。
名前からはとても想像ができませんが、昼腹が減ってきたところで準備は万端。いざ向かいます。
その③へ続きます。

この日記はフィクションです。実際の地名、人物、団体とは一切関係ありません。
  1. 2020/10/27(火) 03:04:48|
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【空想世界旅日記】床抜県2日目その①~伝統工芸きらり光る上相重市~

構内に響く青い笑い声に私は目を覚ましました。

いくら片田舎のこぢんまりと佇んだ無人駅と言えども、朝は通学する若者で賑わいます。
当たり前ですが、奇異を見るような視線がなんとも辛い。
そしてこの時期の野宿は流石に寒い。

しかしながら傍らに置かれた荷物が置き引きされていないのは治安の良い証拠です。
場所が場所なら身ぐるみ全て剥がされていてもおかしくありません。
床抜県は全国的に見ても治安が良いという統計が出ているので、その点については安心して野宿ができると思います。

昨日の探索でこれ以上は何もないとわかったので、この日は早速別の町へと移動します。
談笑に花を咲かせて盛り上がる学生たちと一緒に列車に揺られ、あいも変わらず周囲からの視線にバツが悪そうにしながら次の目的地を考えます。
あてもない旅をしていますが、流石に向かった先に何もないというのはリポートのしようがないので、今回は少しばかり南下して地方都市である上相重市まで向かいます。

上相重市は昔からノノオガエテを使用した工芸品"カミヤエガタ"で有名ですが、ここ近年はノノオガエテのハセで作るアクセサリーが若者に人気で注目を集めています。
ノノオガエテのハセは1本から僅か2kg程度しか抽出できないらしいので、あの大きなものからこれだけしか取れないと考えるとびっくりです。
オオノガエテは食材としても優秀で、細切りにしたものを水に漬け、3日天日に干すと保存食となります。
ごま油と豆腐で和えて、鶏肉の餡を乗せた"ちょちょづく"という郷土料理は今回の目的の一つでもあります。

オオノガエテが名産というだけあって、駅もオオノガエテを全面に出した造り。薄くするほど輝きが増すらしいのですが、朝日を浴びた上相重駅はどこか神々しいくらいに綺羅びやかに輝いています。
例えて言うのであれば雨が上がった後の森といった感じでしょうか。

昨晩からまともなものを口にしていないので、駅の売店で朝食をとりたいと思います。
折角なので上相重の何か名物でも――と思いましたが、まだ早い時間だからか、閉まっていました。
仕方がないので駅前のコンビニでサンドイッチとコーヒーで妥協。イートインコーナーでパンフレット片手に久々の食事にありつきました。
行きあたりばったりとは言え何とも歯切れの悪いスタートが続きますが、伝統工芸が輝く上相重市、今回はここで一体どんな出会いがあるのか期待が膨らみます。
その②に続きます。

この日記はフィクションです。実際の地名、人物、団体とは一切関係ありません。
  1. 2020/10/24(土) 03:01:45|
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【空想世界旅日記】床抜県1日目その③~哀愁漂うかがみてる宮町~

かがみてる宮駅から遠目に眺める御手定山は夕日がかってより一層真っ赤に燃え上がっていました。

――さて、これからどうするか。
駅前の寂れた通りを見ると、飲食店こそ見つけられそうですが、まず過ぎるのは今夜の寝床。
夜になると命を脅かす何かが――といったルールこそありませんが、見知らぬ土地で散策をするのであれば日のある内に行いたいものです。
電車に乗って別駅で宿を探すという手もありますが、何といいますか、それはまたちょっと違うように思えるので、ひとまずこのかがみてる宮を基点に御手山公園方面とは逆の住宅が立ち並ぶ方へと向かってみます。

御手定山は綺麗でしたが、どうしてこうもこの近辺は閑散としているのでしょうか。
次回から下調べをする際は近辺の施設もよくチェックしておくべきだと思いました。

しかしながら、思っていたよりも車は走っていて、スーパーなどの販売店も見かけます。
いくら田舎と言えども、居住地区を一体何だと思っているという話ではありますが、いきあたりばったりな計画もそれなりに希望が持てます。
最悪、駅のベンチでひっそりと夜を越せられればという考えもありましたが、前向きな発想に思わず足も進み、駅からも離れていきます。

いつしか民家はちらほらと消え始め、気がつけば田んぼや畑に囲まれた国道の脇を一人歩いていました。
あれほどまでに御手定山を染め上げていた夕日は、藍色と溶け込んだグラデーションを余韻に残して山の向こうへと消えてしまいました。

道中いくつか商店や小さな飲食店のような建物を見かけたのですが、見知らぬ土地を歩くことに高ぶったのか、次へ次へと進んだのが災いしました。
大体こうなることは見当がついていましたが、もっと早い内に気づいておくべきだったのです。

急ぎ引き返し、とりあえず夕食にありついておこうと店を探しますが、時既に遅し。
商店は閉まり、飲食店も見当たりません。
途方に暮れて歩き、気がつく頃には駅に到着。自動販売機で温かなコーヒーを購入し、木製の固く冷たいベンチにごろりと寝転がり、旅路2日目とは到底思えない侘しい2日目の晩を過ごしました。

この日記はフィクションです。実際の地名、人物、団体とは一切関係ありません。
  1. 2020/10/21(水) 01:52:55|
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食文化と倫理の狭間に生きながらも、軸のズレたリアリティに妄言を加えてカオスと究極のカタルシスを追求し、文章を媒体として視覚的に、尚且つ、盲目的に閲覧者に無償で無価値な情報を提供しています。

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